場内に響くベースの音。サスペンス調に描かれる男の愛と執着。スマートな舞台デザイン。安定感ある俳優陣。特に、若いEverZOneの皆さん(Kei氏, Hiroki氏, Daichi氏の3名)や、吉田諒希氏の好演は、新鮮だった。もちろん、主役の藤村忠寿氏、山村素絵氏、脇を固める藤谷真由美氏、谷口健太郎氏はしっかり落ち着いたシーンを創っていた。札幌公演キャストのまま東京へ持っていけばいいのにとも思うが、さて東京公演はどんなでしょうね。盛況をお祈りします。いってらっしゃい!
久しぶりのイナダ組お芝居。以前見た「亀屋ミュージックホール」や「亀屋演芸場」モノでは、こってり人情芝居が笑いとお涙ちょちょぎれる感じで、場内のすすり泣きに正直やれやれと思った場面もあった。
今回の作品は発見と言えるほど違っていた。クールなストーリー、混沌とした人間の感情が徐々に暴かれていく面白さ、ハッハーン、そうだったか、という展開から余韻を残すエンディング。テーマとインパクトは違うが、ONEOR8の作品「さようならば、いざ」の最後に主人公のゾッとする内面が暴露される、あの「ひゃーっ、そう来たか、やられた!」という爽快感を思い出した。
代表のイナダ氏は挨拶文に、「お客にウケる芝居ばかり考えてきた」が、これからは「自分が今やりたいこと、書きたいことを描く」芝居作りをしたいと書いておられる。そう、それが正しい。私は、以前の作品より今回の作品がずっと好きだ。そもそも作家の書きたいという情熱なくしては作品のメッセージも伝わらない。ウケないことを恐れることはない。観光資源や学校教材にならなくてもいい。自身の「伝えたい」という衝動を信じよう。作家たちよ、自らを解放せよ。
2018年6月10日13:00 コンカリーニョにて観劇。
text by やすみん